野球肘 分類・総論

内側型野球肘

投球動作では、加速期に腕が前方に振り出される際に、肘に強い負荷(外反ストレス)が肘の内側の骨の出っ張り(内側上顆)に加わります.

さらに、その後のボールリリースからフォロースルー期でも手首が背屈(手の甲側に曲がること)から掌屈(手のひら側に曲がること)、前腕は回内(内側に捻ること)、指は屈曲(指が曲がること)に素早く曲がるため、肘の内側に強い負荷が加わります。

この動作の繰り返しにより、年齢によって構造的に最も弱い部分に負荷がかかり損傷が起こります。

内側上顆障害

肘の内側の骨の出っ張り部分(内側上顆)にある成長軟骨が障害されます。

徐々に肘の痛みが出て、初めのうちは投球後数時間で痛みはおさまりますが、そのまま投球を続けていると痛みがおさまりにくくなります。

内側上顆裂離損傷(剥離骨折)

内側上顆障害とよく似ていますが、これはある1球を投げた時から急に痛みが出ます。

肘の内側の出っ張り部分(内側上顆)の成長軟骨や骨が割れたもの(裂離といいます)で、痛みが強いことが多いため2-4週間程度の安静、場合によっては肘の固定が必要なことがあります。

内側上顆骨端線閉鎖不全(骨端線離開)

中学生頃に肘の内側の出っ張り部分(内側上顆)の成長軟骨と上腕骨の間は成長とともに癒合します。

しかし、強い負荷が繰り返しかかると癒合せずに痛みの原因となることがあります。

またある1球を投げた時から急に痛みが出ることもあります。

投球時に内側の筋肉に引っ張られて肘の内側の出っ張り部分(内側上顆)の成長軟骨が上腕骨からはがれた状態です。

ずれが大きい場合は手術が必要になることがあります。

内側側副靭帯損傷

通常骨端線が閉鎖した高校生以上で起こります。

前述の投球動作の繰り返しにより、肘の外反を制御する内側側副靭帯が障害され発症します。

スキーの転倒のような1回の外力で靱帯が完全に断裂する場合と異なり、野球肘では繰り返す牽引により、内側側副靱帯が部分的に損傷したり変性します。

尺骨神経障害

長年野球をすることにより肘に変形が起こり、この変形によって内側の神経(尺骨神経)が圧迫されたり、肘周辺の発達した筋肉が神経を圧迫したりして小指や薬指にしびれが出ることがあります。

投げているうちにしびれが出て投げられなくなることもあります。

投球の休止、腕の筋肉のストレッチ、フォームや体の硬さなどの問題を改善します。

こうした治療で改善しない場合には手術が必要となることがあります。

外側型野球肘

投球動作の加速期における外反ストレスによって、腕橈関節と呼ばれる肘関節の外側(下の図)に圧迫力が働き、さらにフォロースルー期で関節面に捻りの力も働きます。

このストレスの繰り返しにより生じるのが外側型野球肘です。

肘離断性骨軟骨炎(OCD)

10歳前後で発症することが多く、野球肘で最も重症になる障害の1つです。

発症してすぐは、痛みや動きの制限などはありませんが、徐々にに運動時痛(曲げ伸ばしによる痛み)や可動域制限(曲げ伸ばしの制限)が起こる場合があります。

ひどくなると病巣部の軟骨片が遊離して関節内遊離体(関節ねずみとも呼ばれます)になり、引っ掛かり感や肘が動かなくなるロッキング(関節ねずみが関節の中に挟まり、肘がある角度で動かなくなること)をきたすこともあります。

滑膜ひだ障害

投球で肘を伸ばしたとき(フォロースルー)に肘の後外側にある膜が骨に挟まって痛みを出します。

3. 後方型野球肘

ボールを投げるとき、フォロースルーでは肘が伸びますがこの時に肘の後方に衝突するようなストレスを受けます。この動作の繰り返しにより骨端線、骨、骨軟骨が痛みます。

肘頭骨端線閉鎖不全

骨端線が閉鎖する前の小学生から中学生で起こります。

フォロースルーで肘が伸びる際に肘の後ろで骨同士の衝突が起こり、骨端線が開くような力が働きます。

これにより骨端線の癒合が遅れたり、骨端線部分で骨が離れてしまい、骨折のようになることがあります。

肘頭疲労骨折

骨端線が閉鎖した中学生から高校生以降で起こります。

フォロースルーで肘の後ろで骨同士の衝突が起こり、これを繰り返すことで疲労骨折が起こります。

 

後方インピジメント症候群

投球を繰り返すことで少しずつ骨に棘(とげ)のような余分な骨ができてくることがあります。

これを骨棘(こつきょく)といいます。

投球で肘が伸びたときに、肘の後ろで骨同士の衝突が起こり痛みを出します。

4. その他

少年期の肘離断性骨軟骨炎をそのままにしておくと病巣部から軟骨片がはがれる関節内遊離体(関節ねずみ)や骨棘(こつきょく)ができる変形性肘関節症になります。

関節内遊離体(関節ねずみ)

少年期や成人期でも起こります。

関節ねずみと言われる軟骨片が関節で引っかかる際の痛みや急な動作制限(肘ロッキング)を起します。

変形性肘関節症

少年期の肘離断性骨軟骨炎を放置して進行してしまうと通常では中高年以降に起こる肘の軟骨がすり減って骨にも変形をきたす状態にもなりえます。

また成人期でも投球を続けていくと変形や肘遊離体(関節ねずみ)の原因となります。

結論

野球肘と一言で言っても簡単ではありません。

しっかり検査をする(エコー検査・レントゲン・MRIなど)

そのうえで今後のプランを明確にしていくことをオススメします。

きみしま接骨院 院長

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